ハクモクレンやコブシ等の大きくなりたがる樹木を小さく管理し、かつ沢山の花を咲かせる方法を今回はご紹介します。花があまり咲かない方の剪定は、毎年同じ場所でぶつぶつ切って、徒長枝が立ちあがり又ぶつぶつに切る繰り返しが多いのではないでしょうか? このような剪定でも花芽が付きますが、あまり美しく楽しめないなと感じ、色々と試行錯誤してあみ出して技が今回の方法です。最近は、ガールマグノリア等、比較的小型で花付きの良い品種もあるので、新規に植栽するのであればこうした種がお勧めですね。

20年以上剪定を続けるハクモクレン
このハクモクレンは私が駆け出しの頃から切らせて頂いている木ですが、引き継いだ時は立ち枝ばかりのコブ作りのような剪定状況でした。現在も立ち枝は出ますが数本から10本くらいの弱い立ち枝が出るのみです。今年はやや強く出てしまった感じですが、昨年、初めて弟子に切らせたので、切りが甘かったかなと感じます。ちょっとした切り方の違いが立ち枝に勢いをつけてしまいますので、次回の手間を減らすには正確な剪定が重要です。

立ち枝の剪定位置
自分は立ち枝を切る時、付け根ギリギリの外側に向く小さな芽を残し切っておきます。この芽が起き上がり立ち枝になる場合もありますが、樹冠の枝の位置より一段低い位置の芽で切る事で枝が強く立ち上がらなくなります。あとは、花芽を残し、樹冠と揃っていても葉芽は冬までに付け根の小さな芽の位置まで切り戻しをしておきます。見落とすと翌年の立ち枝となって勢いよく立ち上がってきます。花芽は花に力を取られ、その後に伸びる芽も比較的弱い芽になり、短花枝として翌年も花芽になるケースが多いです。

花芽が再び花芽を呼ぶ良い連鎖の状況。沢山の花芽が夏までの完成している。
このように花芽を作る枝だけを残し(徒長枝の先にも花芽ができる場合があるが徒長枝として切り落とす)維持していくと短花枝が毎年更新されて行き、分枝するので花数も増えて行きます。またこのような枝は細いので重力に耐えられず枝垂れ始めますが、ハクモクレンの枝はしだれても、立ち枝を全て切り落としておけば、この枝が枯れ込むことなく成長してくれます。

20年剪定を続けた結果出来上がった枝姿
内側から見るとわかりやすいと思いますが、自然に亀甲型を成しながら年々少しづつ枝垂れ枝になって行きます。内側のヒカリの当たりにくい枝は衰弱して枯れてしまうので、時折、枝を切り戻したり、亀甲を成す片方の枝を間引き稲妻に透かしたりしながら、木漏れ日が内側に入る程度に維持します。

これだけ枝垂れても外側には沢山の花芽が付きます。
こんな感じで時間はかかるのですが小さく花が沢山咲く樹形を維持しています。現在も新たな木を枝垂れさせる技法で剪定していますが、3年もすると基本樹形が出来上がり花数が多くなってきます。あとは徒長枝を毎年切り、徐々に樹勢を落ち着かせて行きます。立ち枝が全くでないと言う事は難しいですが、ここまでくればかなりの手間を省けます。

剪定後の状況
剪定後はこんな感じです。一定以上に下がった枝は園路の妨げになるなど、空間の問題もありますので切り戻しながら下がり過ぎないように調整をしています。自然樹形とは違うので雑木の庭好きとしてはどうかなとも感じますが、既存の木を空間の中に収める方法としてできる事をしてまいりました。

6年前の写真ですがこのように花が一面に咲くようになります。
伸びやかに大木にして楽しめれば良いのですが、ハクモクレンに与えられて空間には限度がありましたので、このサイズで毎年咲いてもらっております。冬の剪定はほとんど手がかかりませんが、前述した葉になる芽を切り戻し、樹冠を花芽に統一することで夏の剪定の手間を軽減させる事ができると感じます。

剪定により枝垂れさせた枝先にたわわに咲き競うハクモクレン
初期の剪定は最終樹形の一回り小さいサイズで骨格となる太枝の位置を決めておき、そこから発生する枝を付けね付近の外側の芽で止め、そこからスタートしますので、初期的にはボロボロですし、その芽が立ち上がるようであれば、再度切り戻し横向きの短花枝が出れば蕾を待つなど、根気も必要ではありますが、結果が見えますので将来像を求めて楽しめる作業です。
如何でしたでしょうか? 既存樹だからと諦めず、気持ちを長くして計画的に剪定を行う事で木は仕上がってまいります。自然樹形とは異なりますが大きくなってしまいがちな木を制する一つの方法です。自然樹形を意識するなら大きくなりにくいガールマグノリア等、比較的小型で花付きの良い品種も昨今では沢山紹介されていますので、それらの中から好みのものを選べば雑木の剪定にょうな軽剪定で維持できる樹種もあります。早春を告げるモクレンの仲間たちに興味がありながら諦めている方も、再度検討して育ててみては如何でしょうか。