
羽化したばかりのアゲハチョウ
気温が上がるこの季節、害虫対策をどうするかお悩みの方も多いと思います。また最近の傾向として無農薬を意識する方も増えてきました。私も無農薬の庭作りを主に行っておりますので、維持管理を行う中で感じる事を書いていきたいと思います。
まずは敵(害虫)を知りましょう!!害虫が目立つ季節は初夏から秋口ですが、それ以外の季節にも卵や幼虫、蛹など色々な形で生きています。害虫や庭の生き物がどのように一年を暮らしているのか、興味を持つことが害虫対策の第一歩だと感じます。
害虫の定義とは何でしょうか・・・?
※虫が苦手な方は閲覧ご注意ください。

芋虫を捉えたササグモ
この写真はササグモです。クモが嫌いな方からすれば害虫と呼びたくなるかもしれません。しかしクモは視覚的な不快さを除けば多くは人畜無害な生き物です。そして農作物を食い荒らす事もしません。彼らは虫を食べて暮らしている事から、有益な生き物と見て良いでしょう。
農薬を使わない庭には、巣を作らず葉の上を徘徊するササグモやカニグモなど、小型のクモが暮らしています。彼らを観察していると、餌である昆虫を探し次々に害虫を捕食していく、いわば庭のおまわりさんのような存在です。

ウンカを捕食するカマキリの幼虫
クモ同様に良く働く昆虫にカマキリの仲間がいます。彼らは1年で大きく成長するため沢山の昆虫を捕食して育ちます。カマキリの仲間は夏を過ぎる頃には大きくなり、時にはセミまで捕まえて食べてしまいます。
このほかにも、アシナガバチやスズメバチ等の肉食の蜂達は、一度餌場を見つけると、仲間を呼び寄せ次々に芋虫や毛虫、他、昆虫を捕まえ肉団子にして巣に持ち帰ります。

芋虫を巣に持ち帰るメジロ
初夏は鳥達の子育ての季節です。木々が豊富で、風が抜けるような明るいお庭を好む小鳥たちは、透けた木々の間を飛び回り一日中虫を探しています。体温が高く、動き回る小鳥達にとって餌をとる事は体温の維持に欠かせません。子育て期は、ものすごい数の虫を捕る事でしょう。
芋虫や毛虫の退治だけでも多くの生き物が対応してくれていることがお分かり頂けたでしょうか。このほかの害虫、アブラムシはテントウムシをはじめ、ウスバカゲロウ他、専門に食べる生き物がいますし、ナメクジやカタツムリ、土中を住家ににするヨトウムシ等の芋虫類には、食肉目の甲虫、マイマイカブリやオサムシ、ゴミムシの仲間が対応してくれたり、ヒキガエルやトカゲ、カナヘビ等も協力的です。

食草に卵を産むアオスジアゲハ、しかし育つのはわずかです・・・
このように、葉を食害する芋虫や毛虫をはじめ、多くの昆虫はものすごい勢いで食べられています。そのため、本来なら爆発的に増える事はありません。もし爆発的に増えるとすると、それはこうした益虫の機能が落ちている事が懸念されます。その原因の一つが農薬の存在だったりします。害虫の多くは外から飛来できる蛾の幼虫や、羽を生やして移動するアブラムシだったりと、何処からともなく度々やってきます。
それに対して、益虫の類は移動距離が少ない生き物も多く、一度散布した農薬で絶滅してしまうケースもあります。その他の原因としては、バラ園やツバキ園、キャベツ畑等、1種類で構成された植栽は専属の害虫が増えやすくなります。できれは種類豊富な植栽として、益虫を呼ぶ工夫をすることで、害虫に対するメンテナンスフリーな庭に育て上げるのが私の考え方です。

バラ園では農薬は不可欠ですが、我が家のバラに大きな被害はありません。
植物達をより美しく愛でるためには農薬に頼るのが一般的ですので、益虫をあてにすれば安泰と言う訳ではないのですが、農薬を使わない方向性を意識する場合には植生を豊かにして、より自然な環境を作り、生き物を導きいれる事で食物連鎖が生じ、特定害虫が増えにくくなると言う事です。テッポウムシの類や、アオドウガネ他、益虫をあてにしずらい虫がいる事も事実です。日々観察をしながら必要に応じた薬剤散布も併用することで、大切な樹木や草花を守る事ができますので、臨機応変さも重要かも知れません。

テッポウムシ(カミキリムシの幼虫)が幹を食害する状況と専用薬剤による対処法
その他、かぶれると危険なチャドクガなど、必要最低限の農薬を限定的に使う事も、植物や人体を守るためには時として重要になります。見過ごせるレベルの害虫は自然のシステムに任せる事が我々にとっても有益な接し方ではないかと感じております。知ると言う事で、怖かった虫が頼もしい虫と感じて頂ける事を心より願っております。