7月19日に永眠されたNHK趣味の園芸講師の玉さんこと玉崎弘志氏を偲んで、お教えいただいた中でとくに印象的だった「大きくなったコニファーを小さくする方法」をお伝えします。

最近何処ででも見かけるようになった育ちすぎてしまったコニファー、お困りではありませんか?
コニファーは針葉樹の総称ですので、今回はロケット型のビャクシンやヒノキの仲間を中心としたグループを小さくする方法を書いてみたいと思います。
先ずは洋風庭園における理想的なコニファーの形をイメージする必要があります。幾何学的な円錐形のように見えますが、やや裾広がりな先の尖がった姿を連想されるのではないでしょうか・・・。私はよく玉さんからそのように教わりました。しかし小さくするには途中でバッサリと切らねばなりませんね。それゆえ形が崩れる事を恐れ放任してしまい木はどんどん成長してしまいます。

市販の木を見てみましょう。自然樹形のまま放置された植木も目にしますが、写真はしっかりとハサミを入れて手の行き届いた苗木で
す
ロケット型のコニファーの中にも色々な枝に角度をした種があります。ビャクシン系のものは枝が上に伸びる種が多いので、そのまま成長させてしまうと、小さなコニファーの束のような状態が出来上がります。積雪によりそれらの枝が開き割けてしまうなど、せっかくの姿が台無しになってしまう事もあるので、それぞれの枝先を切り詰めて仕立てる事で雪の被害も少なくなります。ヒノキのグループは枝が横に広がりやすく雪をある程度受け流せるものもあるように感じますが、複数の幹が立つものなどを中心に、同様に影響を受けにくい樹形に仕立てておくと安心です。

枝先を切り詰める事で分枝して細くて詰まった樹形になる
上記の写真をアップにしたものですが、切る時に周囲の葉を切らぬように、枝を狙い撃ちして切って行く事が美しいコニファーを維持するには大切です。先輩方が良く話してくれた話の中に、カコニファーは金物を嫌うから刈り込まない方が良いと言う話もありました。カイズカイブキなど古くからあるコニファーもそうですが、刈込後に切口が赤く枯れ込み見苦しくなる事が多く、それは他のコニファーでも言える事です。なのでご自身で剪定されるときは一手間かけて,木挟みで一枝一枝切って行くと美しくなります。

小さなコニファーなので限界はありますが、これを見本に剪定をしてみます
それではいよいよ剪定をしてまいります。高さ1.2m弱の小さなコニファーですので少々無理はありますが、剪定でさらに小さくしてみたいと思います。
剪定の時期は、芽が動き出す春先などが良いと思いますが。枝葉が3割減程度であれば夏や冬でも耐えてくれています。

作業1 枝の伸びを確認してどれくらいサイズダウンするか検討します
あまり剪定がされぬまま育ったビャクシン系のコニファー、ウィチタブルーです。写真のように脇枝が小さなコニファー状に成長しています。同じ他ビャクシン系のブルーヘブンなどより成長が遅く便利なコニファーではありますが、じわじわと大きくなりますので、剪定他、管理も大切です。

作業2 先端を作る位置を決めよう
幹に沿った枝を切りたい位置周辺から探しましょう。大きな木で枝先が遠いものや一時的な補修が問題ない場合は、切った幹の下の枝を上に残した幹に沿わせて、軽く縛り整える方法もあります。良い枝葉があればそれを利用します。

作業3 残す枝葉の上まで幹を切り戻す
先端部分が決まったらその位置まで切り詰めます。大きな木の場合は切り詰める幹も太くなりますので剪定挟みや剪定鋸で残す枝葉を痛めないように切り詰めます。

作業4 先端を作る
先端を意識して周囲にある枝葉を円錐形に切り詰めて行きます。先端が先端として成長しないとかっこ悪い木になってしまうので残した枝葉を痛めにように十分に注意して切って行きます。

円錐形を作る
先端が決まったら、後はひたすら円錐形をイメージしながら下方へ剪定を進めていきます。この時にハサミを枝の角度に合わせて差し込み枝を切るのが玉さん流!! この時にしばらく放置したコニファーでは、葉と幹の間に枯れた葉が積もっている場合も多いので、上から順番の揉み落とすようにクリーニングもしましょう。枯れ葉は病害虫の温床にもなりますし、風通しが悪いと蒸れて周囲にある葉を枯らしてしまったり、暑さに弱い種は衰弱する原因にもなります。取り除くと内側にも芽を吹く種もあるので次に切る時にさらに円錐形を細くできる可能性も残されます。

終了
1m20cm弱の樹高を80cm弱にまで縮める事が出来ました。コニファー類は水切れや肥料切れにより枝葉を減らし租になって行きますので、緩効性の化成肥料を1年中利かせつつ、鉢の場合は定期的な水やりをすることで葉が多く美しいコニファーを育てる事が出来ます。

お庭で大きくなり雪の被害を受けたイタリアンサイプレスを小さくする
8mほどに達したイタリアンサイプレスを少しサイズダウンしてみました。

先端を1mほど切り落とした状況
先端を前述のとおり作り円錐形に切り下げてきますが、もともとがイタリアンサイプレスは鉛筆型なので、雪で枝が開きにくくすることを意識しつつ細くすると言うイメージで行います。先端を加工する位置も直径が3cmを越える太さなので剪定鋸で切り詰めて、先端を作って行きます。

終了
雪で曲がってしまった癖を、手でゆっくり曲げながら伸ばして完成です。木の高さもあるので先端部分は肉眼で見ても違和感のないレベルに仕上がりましたが、近くで見ればやや繊細さに欠ける事は言うまでもありません。全体像として美しいか否かが重要ですからあまり近視眼的になりすぎず、引いて物を見る習慣も大切だと言う事は常々習ってまいりました。
如何でしたでしょうか?玉さんから教わったコニファーを小さくする技。自分で20年程実践していて種類によって癖はありますが、このような方法で小さく維持しております。庭作りの技や剪定の技をはじめ、古い道具の使い方や道具が無い場合の色々な方法を朝から晩まで教わっていた色々な事が脳裏に蘇ってまいりますが、コニファーの剪定は意外と紹介されておらず質問の多いジャンルではないかと思います。大きくなり荒れてしまうコニファーが目立ち始めて10年以上が過ぎ、ガーデニングブームが去った象徴として次々に伐採されないように、少しでも手を入れて大切にしてほしいと思います。
ガーデニングはファッションではなく、人生そのものだと言う事を教えてくれた玉さんには感謝の気持ちでいっぱいです。今後は頂いた知識を次世代や多くの方に知って頂けるように頑張りたいと思います。改めて御冥福をお祈り致します。